Gray-Wind
□第一話【風を纏う者】
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「……あ、そろそろ着く頃だよ。あれじゃない?」
しばらくして、カナリはある方向を指差した。樹々の向こうに土色の建造物らしきものがかたまっているのが見える。
二人を乗せた魔法陣はその中の塔の一つに近付き、屋根の上に来ると風になって掻き消えた。降り立った二人は辺りを見回す。
「ここで合ってるのか?」
「そのはずだよ」
古代都市ヴェントルーチェ。土色の石で造られた建物によって形成されかつて栄えていたその都市は、時の流れにより活気を失いあちらこちらが風化している。
「本当に、ここに"カギ"があるの?」
「さあな。取り敢えず、この都市を探索する必要がありそうだ。行くぞ」
そう言って、ゼンは塔の近くにある建物に跳び移り屋根をつたって地面へと降りる。それを追うようにカナリも続いた。
「何があるかわからない。俺から離れるなよ」
「うん」
短く言葉を交してから二人は並んで歩き出す。
「……本当なら、現地の奴らに直接話を訊くのが一番良いんだ」
「こんな古代都市にも人が住んでるの?」
「場所にもよるけどな。大抵はその地に縁のある一族だが、都市をアジトにして周辺の街を襲う賊もいる。賊の場合はぶっ倒して聞き出すまでだ」
「ここはどっちだろう……!」
ゼンの言葉にカナリが呟くように返したその時。何か冷たいモノを感じた二人は同時に足を止め、背中合わせになった。己の得物に手をかけ、そのまま周囲を見回す。