Gray-Wind
□第一話【風を纏う者】
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光の塔の広い屋上の一つに四人は出る。必要最低限の荷物を持ったゼンとカナリは前に出た。
「じゃ、よろしくカナリ」
「うん」
ナギに促されたカナリは頷き、おもむろに自分の得物である刀を鞘から引き抜く。少し反り気味の刀身が傾いた太陽の光を受け強く光った。
カナリはそれに向かって小さく呼びかける。
「いくよ、風疾」
すると彼女の声に反応し、刀身が淡く緑色に発光した。それを見てカナリはは自分の胸の前で刀を横に構え、刃のない部分を撫でた。
「──"カミカゼ"」
一陣の風が吹き、地面の少し上の空間に集まる。やがてそれは淡い光を放つ一つの魔法陣を形成した。丁度二人が座れそうな広さだ。
カナリは息をつくと静かに刀を収め、躊躇いもなくそれに足を乗せた。
「乗って」
促され、ゼンも足をかける。意外にもしっかりとした足場で、固い地を踏んでいるかのような感覚だった。魔法陣の上に乗った二人にナギが声をかける。
「カナリ、わからないことはゼンに訊いてね。ゼン、カナリのフォローよろしく」
「わかってる」
「うん。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけて」
姉妹に見送られ、二人は空へと飛び立った。
二人が見えなくなった頃、無邪気にヒカリが問う。
「ゼン、いつ気付くかな」
「帰って来るまでには気付いてるんじゃない? 大丈夫、きっと気付くわ」
二人はよく似た表情で楽しそうに笑った。