Gray-Wind
□第二話【紅き瞳の奥底の】
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「――気がついたか、ユキ」
目を覚ますと、傍らにヒスイの姿があった。胡座をかいた彼女の膝には黄色い頭が乗っている。自分たちのすぐ近くには、保護した少年が膝を抱えてじっと座っていた。他の守護者たちの姿はない。――何が、あったのだろうか。
ユキの視線で何を言いたいかを悟ったヒスイは口を開いた。
「奴さんがここを嗅ぎつけてきたんだ。今外で双子とゼンが戦ってる。サンは見ての通り結界壊されたダメージでダウン、オレは――少年とサンとユキのお守りってとこだ」
確かに、断続的に空気が震えているのを感じる。重い爆発音のような、打撃音のようなものも微かに聞こえていた。
「――っ」
「あーっくそ、オレも戦いてぇのに……」
「テメェの結界が体力使い過ぎてんだよ。もっと守護の術の訓練するんだな、バカザル」
「バカ言うなって……」
膝の上で呻くサンディラにヒスイは呆れながらその額をぺちりと叩いた。こんな状況であるにも関わらず、この二人はどこか和やかだった。
まだ少しぼんやりしている頭で、ユキは考える。現在の状況、そして、先ほど見た夢について。夢であるのにも関わらず、やけに鮮明に覚えている。炎を纏う少女、その、最後の言葉は特に。
思考を巡らせながら起き上がろうとしたとき、ユキは自分の手が何かを握っているのに気付いた。状態を起こしながら右手に目を落とし、ゆっくりと開く。
「――っこれ」
驚いて目を丸くする。彼女の手に握られていたのは、星形のペンダントだった。シンプルだが精巧な装飾が施された銀の星、その中央には、光の角度や見方で色を変える不思議な鉱石が飾られている。
「どうして、これが……!?」
考えていたことを忘れて、ユキはペンダントを凝視しながら震え声で呟く。
「――あぁ、それか? ゼンが置いて行ったんだよ」
ユキの疑問にあっさりと答えたのはヒスイだった。叩いたままにしているのか、サンディラの額に手を置いたまま穏やかな声音で続ける。
「ここを出る前に、ゼンがお前に託していったんだ。そのペンダントを外に出してるのを見るのは久々だな」