Gray-Wind

□第二話【紅き瞳の奥底の】
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「ゼンは……?」

「応急処置のおかげで何とか……いや、本当はすぐに『塔』に送り返したい感じだな。傷がちょっと深いんだ」


 苦々しげに言って、ヒスイはガシガシと自分の頭を掻く。


「一応、オレは治癒の術が使えんだが……正直ちょっと苦手でさ、あんまり使いこなせてねぇんだ。今のオレの力じゃ、せいぜい体力回復と浅い傷を癒すくらいってところだな」


 本当は全快にしてやりたいのだ、とヒスイは悔しそうに呟いた。その言葉を聞きながら、ユキは唇を噛み締めゼンの表情を見る。失血のせいかまだ顔色の悪い彼を見て、次に己の手に視線を落とした。


「――何をするつもりだ」

「!」


 いつの間にか背後に来ていたグレイルの声に、ユキはゼンの傷口辺りに伸ばしていた手を止める。返答することも振り返ってこちらを見ようともしない様子のユキの背を、彼は睨んだ。


「無闇に触って傷を深めたりでもしたらどうする。そもそも、ゼンはお前のせいで負傷したんだ。そのことを解っているのか?」

「…………」

「パートナーに庇われた挙句怪我を負わせるような弱い奴を、おれは守護者とは認めない」

「グレイルやめろ。それ以上……」

「帰れよ。パートナーすら守れない守護者がここに居る必要はない。足手まといなんだよ!」


 ヒスイの制止の声も聞かず、グレイルは厳しい口調でユキに言葉をぶつけた。ユキは目を伏せたままそれを聞いているだけで、何も言わない。その様子を見て眉間に皺を寄せたヒスイは再度グレイルを咎めた。


「グレイル、言いすぎだ。何もそこまで言わなくてもいいじゃねぇかよ」

「お前らだってそう思ってるだろ。違うか? おれはお前らが思っていることをそのまま口にしているだけだ」

「だからって言い方ってモンがあるだろ!」

「お、おい二人とも……」


 突き放すような物言いに今度はヒスイが噛み付く。そんな様子の二人を、サンディラは困惑の表情を浮かべて見ていた。
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