Gray-Wind
□第二話【紅き瞳の奥底の】
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《act.3》
目覚めたユキの視界に入っていたのは、暗がりに浮かぶ黄色と赤の何かだった。ばんやりとしていた視界は徐々にはっきりとしていき、薄暗い石造りの天井と、自分の顔を覗き込む少年の顔を映す。思いがけないその近さに驚いたユキは、思わず声を上げた。
「わっ!?」
驚いて起き上がろうとするも、すぐに鈍い音がして額に痛みが走る。どうやら、彼に頭突きしてしまったようだった。
「いっ……たぁ」
「……大丈夫かユキ?」
患部を抑え呻くユキに対して同じく額をぶつけたはずのサンディラはさして痛がる様子もなく話しかける。どうやら相当な石頭のようだった。
「う、うん……」
「よし。ヒスイ! ユキが目ぇ覚ましたぞ!」
「おーそうか。とりあえず水飲ませろ」
ヒスイに指示を煽ったサンディラはちょっと待ってろ、とユキに告げて離れる。身を起こしたユキは、薄暗い石造りの部屋を観察していた。自分が横になっていた場所から見て左側に双子とここに到着した時に会った少年、そして右側の隅に横たわっているゼンとその傍で胡座をかいているヒスイの姿があった。
「ほら、飲みな」
「……ありがとう」
サンディラから差し出されたコップを受け取り、ユキはやや乱暴な仕草で一気に飲み干す。そして空になったコップをサンディラに渡すと、そのまま立ち上がった。目眩がして一度ふらついたが、踏みとどまって堪える。
「お、おい、ちゃんと寝てろって。まだ回復してねーんだから」
「――大丈夫」
その行動をサンディラが慌てて止めようとするが、ユキは短く答えると不安げな足取りでゼンとヒスイの傍に近寄った。ゼンを挟んでヒスイの向かい側に腰を降ろすと、わずかに顔を歪めながら眠る彼の様子を眺める。
肩に巻かれた包帯には赤く滲んだ部分があり、そこが傷口のある部分なのだとわかる。その周囲にはぼんやりと蒼く光る粒子が漂っていて、ヒスイが治癒を施している最中なのだとユキは思った。