Gray-Wind
□第二話【紅き瞳の奥底の】
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「話をそらすな。どうして黙ってたんだ」
「言わなきゃ駄目かしら?」
笑みを浮かべた状態でわざと言ってみるとゼンの眉がピクリと動いた。どうやら遊びすぎたようだ、と悟りナギはひとつ咳払いをした。
「……あなたが動揺すると思ったからよ、ゼン」
先程のどこか楽しむような声音を抑え静かに言うとゼンは訝しげな視線を投げかける。
「思い出して。ここに来た時彼女は怪我をしていた。傷だらけで、力尽きて気を失って倒れていたところをルイが保護したの」
「!!」
「そんな状態の彼女がユキだってゼンに言ったら、酷く動揺するでしょう? 自分のこともお構いなしに付きっきりで看病するでしょうし」
違うかと首を傾げて問うと、ゼンは眉間に皺を寄せたまま黙った。ほらね、とナギは笑う。
「ユキと知った時点で次の任務は組ませるつもりだったから、その時に解るだろうと思っていたしね。言ったでしょう、エガとの相性を見なくても大丈夫だって」
「…………」
ゼンは不機嫌そうな表情のまま横を向いた。納得しかねている様子にナギは苦笑する。
「隠していたことは謝るわ。……けど、これで決まったでしょう? ユキとペア、組むわよね?」
拒否は許さない、とでも言うようにナギは視線を向ける。やはりどこか楽しんでいるような彼女にゼンは諦めたような溜息を一つ吐き、けれど次に強い光を宿した目を見せた。
「当たり前だ」
「……じゃあ、決まりね」
もっとも、彼が拒否することは有り得ないと解っていたのだが。これ以上何か言うとまた怒りそうだと心の中で呟いて、ナギは満足そうに微笑んだ。