Gray-Wind
□第二話【紅き瞳の奥底の】
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一方、ゼンとユキは背中合わせになっていた。
「……キリがねえ。一体何匹いやがんだこいつら」
「解らない。でも倒すしかないよ」
魔物の多さに思わず眉間に皺を寄せるゼンに結界を張りながらユキが答える。仕方が無いと彼女も言ってはいるものの、その表情は険しかった。このままでは先にこちらの体力が限界に達してしまうだろう。
「……ゼン」
炎を放ちながらゼンは肩越しに振り返る。同じように視線を投げ返しながら風を操るユキにゼンは目で問うた。
「カミカゼを出す。空から大きいのを打てば、何とかなるかも」
「――なるほどな」
いけるかもしれない。やってみるかとゼンが微かに笑うと、ユキは頷いて一陣の風を呼び寄せた。魔法陣の上に乗った二人は空高く舞い上がり、魔物達は呻き声を上げた。
「いくぞ、ユキ」
「うん」
短く言葉を交わした二人はそれぞれ刀を構え、同時に叫ぶ。
「業火招来」
「青嵐斬波」
放たれた炎と風。魔物を斬り裂き、焼き払う。地上が紅く染まる中、二人はその様子を魔法陣の上から見ていた。
「やったか?」
「大体は……あ、あそこ! 見て!!」
ある光景を見止めたユキは険しい顔でその場所を指し示す。周囲が炎に包まれているのにも関わらず、ほぼ無傷の状態で立っている魔物の集団があった。
「どうして……」
眉根を寄せて呟くユキの横でゼンは目を凝らす。魔物の集団の、その中央。他の魔物に守られるようにして立っているようにも見えるその存在は、ニタニタと笑っているようで、一匹だけ浮いていた。
「あいつだ。真ん中にBがいる」
おそらく能力は防御系だろう。どうやら接近戦になりそうだった。
「他のはあらかた倒したから、降りて戦おう」
「ああ。……ユキ」
Bランクの魔物を睨み、風疾の柄を握ったユキはゼンに顔を向ける。煉瓦色の瞳が、紅く光った。
「俺の傍から離れるなよ」
「わかった……行こう」