孤月と猫
□幸せな時間
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暖かな光。突き抜けるような青い空。ずっと見ていると、その青と自分の意識が同化してしまいそうになる。
烏は屋上の入口裏にできた日陰に座ってぼんやりと空を眺めていた。
今は昼休み。もうじきそれも終るのだが、午後の授業は受けようという気がしない。どうせ自習なのだ。居なくても見逃してくれるだろう。
ぽかぽかと暖かい昼間の時間。このまま眠ってしまおうとうとうとし始める。
すると、反対側の扉が音を立てて開いた。軽やかな足音が聞こえ、烏は閉じかけた目を開ける。聞き慣れた足音、そして見慣れた姿が視界の端に現れた。
「烏っ!!」
彼を見つけた鈴猫はその顔を覗き込み、屈託のない笑顔を浮かべた。そんな彼女に烏は目を向けて応える。
「……どうした」
「烏、どこにいるのかなーって。一緒にお昼食べようと思ったんだけど、直ぐにいなくなっちゃうんだもの」
「……何処に行こうがおれの勝手だろう」
「まぁ、そうなんだけど」
ぶっきらぼうな物言いに彼女は困ったように微笑む。
そして、何を思ったのか烏の横にすとんと腰を下ろした。