孤月と猫

□ココロ
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 何処までも続いている青空を見ていると、自分もその中に吸い込まれて行きそうになる。


 いつの間にか、足を止め鈴猫は空を見上げていた。



「――おい」


「……んあ?」



 烏の声で我に返り、少し間の抜けた返事をする。



「何ボーッとしてるんだ」

「……あれ、ごめんごめん」



 思わず笑い、少し先にいた烏の元へと駆け寄った。



 彼は先程よりもゆっくりと歩き出す。




「雲のない空見てたら、何かボーッとしちゃって」


「……雲がない、か……思えば、久々だな」


「でしょ? あの時も雲一つない青空だったよねぇ」


「――あの時、か……」



 二人が共に旅立ったあの日。その日も確か、そんな天気だったか。


 鈴猫はふと、烏を見た。



「……前から聞きたかったんだけど……」


「……何だ」


「どうしてあの時、いいって言ってくれたの?」




 烏はピタリと足を止めた。



「烏ー?」


「……理由、か?」


「うん。そうだけど?」




 少し遠い目をして軽く息をつく。




「……お前のあの無謀な計画を聞いた時、心底呆れて心配になった」


「――ひどっ!!!」



 鈴猫は些かショックを受ける。



 それはすぐに苦笑に変わった。



「あの時はアタシだって一生懸命考えたんだよ? それに、現に腕っ節も強いし」


「……心配なモノは心配なんだ。――それに……」



そこで烏は口を閉じる。
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