孤月と猫

□旅立チ
2ページ/4ページ

「…っこれ…………!?」


 朝起きて間もなく、廉は一気に目が覚めた。彼の手には一枚の紙があり、それには文字が沢山書いてある。手紙だ。まだ子供とはいえ、廉にも文字は読める。特に教えて貰った人の字は忘れる筈がなかった。


「鈴……ねぇちゃん………?」


 暫くして、廉は弾かれたように家を飛び出した。家の裏にある畑に二つの影が見える。


「とうちゃーん!! かあちゃーん!!!」


 我が子の声が耳に届き、二人は顔を上げる。


「廉!! どうしたね、そんなに慌てて」

「ねぇちゃんがっ!! 鈴ねぇちゃんが……!!」


 酷く興奮した様子の廉から手紙を受け取る。暫くして、二人はとても優しい目で空を見上げた。


「……そうか……鈴ちゃんも、やっと……」


 頭上は、雲一つ無い、何処までも青い空が広がっていた。





 ……行っておいで。

 きみがそう言ってくれるのをずっと待ってたよ。

 強い想いが在るのなら、

 叶えたいと思うのなら、

 何処へでも行くがいい…


『…………行ってらっしゃい、鈴猫……』
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ