孤月と猫
□旅立チ
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目を覚ますと、朝だった。知らずのうちに眠ってしまったらしい。
「……」
「――あ、おはよ。……気分はどう?」
昨日の朝と変わらない笑顔の鈴猫がそこにいた。戸惑いつつも男は顎を引く。
「そっか。よかった……ご飯食べる?」
「……ああ」
男はゆっくりと起き上がった。顔を触ると、何時もの布の感触がした。その手触りに言いようのない安心感を覚えた。
「……ねぇ」
突然、鈴猫が聞く。男は自分の手に視線を向けながら返事をする。
「……何だ」
「一つ、聞いていい? ――傘持ちさんの旅の目的って……何?」
「……呪いを解く方法を探している。何故、おれに受けてしまったのかも……」
あまり聞き取れない声音で言う。誰かに自分の事を話すのは初めてのような気がした。
……否、それは彼女だから、なのだろうか。初めて自分を受け入れてくれた人だからだろうか。
「……そっか」
鈴猫は振り向く。朝日に照らされた彼女の笑顔は、とても眩しくて――そして、とても美しかった。