孤月と猫
□醜イ素顔
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「……あーあ、こんなになっちゃって……」
小屋の中で、鈴猫は自分の右足を見て溜め息をついた。手早く止血をしていた布が赤く滲んでいた。見た目ほどの傷でもないのだが、見ていて痛々しい。
「傘持ちさん、そこの棚から緑色の瓶取ってくれない?」
「………」
男は立ち上がり、示された物を取る。鈴猫はそれを受け取ると自分で薬を塗り始めた。
「……っいたっ、いたたたたたた…………ごめん、包帯も」
顔をしかめ、痛い痛いと言いながらも薬を塗り、丁寧に包帯を巻いていく。最後にそっと触れ、頷いた。
「……よし、なんとかいける」
「……何であそこにいたんだ」
「いやぁー熊追いかけてたらつい夢中になっちゃって」
男の呆れたような声に爽やかな笑顔を返し、鈴猫はゆっくりと立ち上がる。男は少し驚いた。
「――もう動くのか?」
「うん。あんまり酷くないし、こんな傷よくあるしさ。さっきは足もすくんじゃってパニクってたから動けなかったんだ」
そう言い、鈴猫は男に近づくとその手を握ってぶんぶんと振った。
「さっきはアリガト!! もー死んじゃうかと思ったよ」
「……あ、あぁ」
「……でも、何であんなとこにいたの? もう普通に歩いたり走ったりしてるし、大丈夫なんだろうけど」
首を傾げると、男は少し言い難そうに顔を反らし、呟くように言った。