Gray-Wind
□第一話【風を纏う者】
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《act.1》
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少年と少女が向かい合って立っている。
少年は少し辛そうな表情で少女を見ていた。
対する少女の顔はよく見えていなかったが、その目にはこぼれそうなほどの涙が溜まっていることがわかる。
少年は少女に別れの言葉を告げ、去ろうとする。
すると突然、少女が少年を呼び止め、彼の手に何かを握らせた。
そして、少女が言った、最後の言葉……………
『いつか、私も行く。絶対、ゼンと一緒に戦うから』
その言葉を聞いて、少年は頷いた。
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「―――ちょっと! ダメですよじっとしてなきゃ!」
『光の塔』内に設備されている病室の一つで、突然声が上がった。……と、病室のドアがやや乱暴に開かれ、中から看護士らしき女性と左腕に包帯を巻いた一人の青年が出て来た。
青年の赤みを差した茶髪が揺れ、明るめの茶色の瞳が少し細められる。
「べつにたいしたことねぇだろ、このくらい。利腕でもないし、こんなんでいちいち病室に寝てられるかよ。それに、見ず知らずの女と同室なんて気が重くなる」
「そんなこと言われても」
「いい加減、俺の行動パターンぐらいわかれよ。俺が何年ここに居ると思ってんだ」
青年はぶっきらぼうに言って看護士の手を振り払い、紅いラインが入っている上着を肩に掛けた状態で歩き出す。
そんな彼の後ろ姿を見て、看護士は溜息をついた。
「あーあ、何でゼンさんはいっつもああなんだろう」
「まあ、ここにはあまり病室ないし、それに女の子が来るんだからこっちとしてはありがたいんだけどね」
「……そうなんですけど。でも、みんなちゃんと治ってからどっか行ってほしいです。なんでみんな怪我に無関心なんだろう……って、こ、司令官(コマンダー)!?」
他者の言葉に頷き、振り返った看護士は驚く。背後には、ナギが立っていた。
「がんばってるわね」
「きょ、恐縮です………」
思わず苦笑してしまった看護士にナギはにこやかに笑い返し、一瞬で真顔に戻るとスッと身を引いた。
彼女の後ろには少女を抱えた男が立っていた。