Gray-Wind
□第一話【風を纏う者】
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《act.2》
「こんなこともできるのか、お前」
突然話しかけられ、カナリは慌てて横を見た。煉瓦色の目がこちらを見ているのに気付いてすぐに目をそらす。
「あ、うん。光の塔にもこれで来ようとしたんだ。……あの時は場所がわからなかったし、怪我してたから近くまでしか行けなかったけど」
場所がわかれば確実に行けるのだ、と彼女はゼンに言う。
「便利だな」
「でしょ?」
カナリは少し得意そうに笑った。ゼンは話を変えようと口を開く。
「ナギから『光の塔』についてどれだけ聞いてる?」
「……ほとんど聞いてないと思う。私に力があるってことぐらいしか」
──あのアマ
要するに、彼女は説明を全てゼンに押し付けたのだ。やや横暴な司令官を恨めしく思いながらゼンはため息をつく。
「取り敢えず重要な部分だけ説明するぞ。まず『物語』の内容は知ってるか?」
「異世界ストライズには二人の神が存在した、ってやつ?」
「あぁ。その『物語』に出て来る『守護者』、それが俺達だ。守護者は今十人。あと一人で全員が揃う。で、俺達の使命は世界に蔓延る魔物を退治し、闇の神から世界を守ること。その為に俺等は今"カギ"を探してる」
「ナギも言ってたけど、"カギ"って?」
「"カギ"ってのは、ナギも言ってたように守護者の力を増幅させる存在で、モノだけどモノじゃない。精霊やら守り神みたいな存在で、これもまた十一存在する。今"カギ"持ちは『夢の守護者』だけ。だから今の任務のメインは"カギ"探しと魔物討伐の二つだ」
「今回の任務が"カギ"探しなんだね」
「あぁ。『光の巫娘』であるヒカリが夢を見た場所には十中八九"カギ"があるんだ」
「そうなんだ……よくわかった。説明有り難う」
カナリは微笑んだ。話が終わったのだろうと思い、再び前を向く。