RKRN小説(暴君受け)

□“好敵手”と書いて“とも”と読む
1ページ/7ページ


 忍術学園の最高学年である六年生の中でも、い組に籍を置く立花仙蔵はかなり優秀な忍たまである。
 まだ生徒でありながら焙烙火矢を完璧に使いこなし、座学では大抵のことを一度で覚え、試験では常にトップの成績を維持していた。
 まさに文武両道であり、おまけに背に流れる紫暗の髪の艶やかさは学園一と謳われ、それに切れ長の瞳と通った鼻梁に白い肌と、容姿の面でも文句の付け所が無い。
 性格の方にも大した問題は見受けられず、立花仙蔵は完璧なのだと誰もが思っていた。
 …ただ一人、完璧だと噂される当の本人を除いて。
 本人曰く、自分はあくまでも完璧を目指す“完璧主義者”であって、完璧そのものになれたことは一度も無いのだと言う。
 大抵の人間はそれを聞くと、自分の実力を驕ることのない仙蔵を褒めたりするのだが、実を言うと仙蔵はそれが大層不本意だった。
 何故なら仙蔵には密かにライバル視する人物がいて、またその人物に一度も勝ったことがなかったからだ。
 そんな状況下で如何に他人に褒められようとも、仙蔵はその言葉に酔う様なことはなく―――また六年生にもなった今、その人物に対してあからさまに敵対するようなっこともなかったが、昔はそれなりにライバル心を燃やして目の敵にしていた頃もある。
 仙蔵程の実力者が好敵手と認めるその人物とは、一体どんな優れた忍術の使い手なのか。
 その者の名前は―――。

**
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ