RKRN連作小説

□秘密の姫君3
1ページ/5ページ


 とんとんとん。
 放課後の用具倉庫から、テンポ良く木槌を振り下ろす音が響く。
「…あとはここを固定して…っと」
 四年は組の用具委員である食満留三郎が、先日とある事件に巻き込まれて見事に壊されたアヒルさんボートの修理をしていたのだ。
 事件といっても、同級生の七松小平太が委員会でバレーボールをしていたら、ボールがアヒルさんの顔に命中してぶっ飛んだ…というのが事の顛末で、それを聞かされたとき留三郎は正直頭が痛くなった。
 小平太はよく物を壊す。
 別に見るからに筋肉隆々といった身体つきをしている訳でもないのだが、スパイクしたボールを叩き割ったり砲弾を蹴り飛ばしたりと色々と規格外な人間なのだ。
 おかげで最近では人外の怪力を持った破壊神などと噂までされているが、残念ながらその噂は本人の元まで届いていないらしく、まったく気にしている様子は見られない。
 更に悪いことに小平太の趣味である塹壕掘りで掘られた穴を埋めるのも用具委員の仕事であり、用具委員会の仕事は増える一方だった。
「あいつも悪気は無いんだろうけどなぁ…」
 思わず、漸く修理の終わったアヒルさんを手に溜め息をつく。
 もう少し何とかならないものだろうか。
 例えば、小平太が物を壊さないように誰かが傍で見張っている、とかどうだろう。
 塹壕を掘ろうとしたら直ぐにそれを止めさせて、近くに壊れそうな物の無い空き地や山の中で、加減させながらバレーボールの相手でもしてやれば良いのではなかろうか。
 誰かが、直ぐ傍にいて。
「…ん。 そうすりゃ、全部解決するじゃねぇか!」
 思い浮かんだ名案に一人頷いて、留三郎は用具倉庫を後にした。

**
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ