07/01の日記

12:21
*添い寝のススメ
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「なぁ、一緒に寝ないか」

 まるで鍛練にでも誘うような気安さで掛けられた言葉に、留三郎は絶句し、そして内心で驚愕した。
 小平太の底抜けに明るい太陽のような笑顔に惚れて、恋仲になってから早数ヶ月。
 留三郎は今日まで、それこそ手を繋ぐのに留まるような、極めて“清い”お付き合いを心掛けてきた。
 それは決して留三郎がビビっているだとか意気地がないだとか、そういうことが原因であるという訳ではなく、ただ可愛い恋人を大事にしたいという思いがあってのことで。
 つまり望まれれば、そういう関係になるのに些かの躊躇いもない。
 ―――落ち着け、俺…!
 逸る心臓を押さえ、留三郎は大きく深呼吸をした。
 恋人に一緒に寝ようと持ち掛ける。
 ―――それはつまり、そういう意味だよなぁ…!?
 嫌がおうにも高まる期待に、まるで生娘のように頬を赤らめ胸をときめかせたって、一体誰に咎めることが出来ようか。
「…あー、小平太? お前俺と、一緒に、寝たい、んだな?」
 変に緊張して声が上擦ってしまったのは少々情けなかったが、小平太はそんな細かいことは気にせずににっこりと笑って頷いた。
「ああ、一緒にだ! …それとも、ダメか?」
 そう言って笑顔を曇らせたかと思ったら、今度は首を傾げて、留三郎の顔を覗き込んできたりするものだから。

 ―――キターー(゜∀゜)ーーー!!!

 留三郎は今度こそ耐え切れず、胸中で絶叫した。
「だっ ダメな訳ないだろ! 寝よう今すぐ寝よう!!」
 畳んだ布団を押し入れにしまってあることを、今日ほど後悔した日はない。
 寝床を準備する手間さえももどかしく、整えるのも程々に枕を並べて布団をめくる。
「これで、よし」
 準備は完了した。
 賽はいよいよ投げられたのだ。
 あとはここに、二人で共に横たわるだけ。
 そう考えると益々頬が緩み、その顔面には何ともだらしのない表情が浮かんだ。
 だがそんな留三郎の耳に、思いも寄らない音が届く。
「どうしたんだ留三郎。 布団が足らんぞ」
「…へっ?」
「二人で寝るのに一個しかないんじゃ寝られないじゃないの」
 言うが早く、小平太はやれやれ、とぼやきながら布団を取り出すと、あっという間に敷き終え、その中にするりと滑り込んでしまった。
「じゃ、お休み」
「え、ちょ、小平太…!?」
 留三郎は突然のことについていけず、焦った声で呼び掛けても返ってくるのは最早、気持ちの良さそうな寝息だけだった。
「…ちょっと待ってくれよ…」
 あんな風に誘っておいて。
 俺達一応、付き合っているのに。
 確かに勝手に深読みして、勝手に期待を抱いていたのは自分なのだけど。
 だけどまさか、別々の布団でさっさと寝てしまうなんて。
 いくらなんでも、これは。

「そりゃあないぜ小平太〜〜〜〜ッ!」

 ―――この日、忍たま長屋に響き渡った悲しい男の慟哭は、結局誰の耳にも止まらず。
「…ああ、良いよ…分かったよ…こうなりゃ合意なんて知ったことか…」
 またこの日、妙な決意を固めた男がいたことも―――
「無理矢理でも良い…犯してやる…っ!!」
 後日その決意を実行した男が、返り討ちにあって泣きを見るはめになることも、誰ひとりとして、知る由のないことだった。


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たまには甘い留こへ書こうと思った結果惨敗(いや失敗?)しました。
20期の公式の留こへっぷりに一人で悶えてます
みんな書こうぜTOMEKOHE☆

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