01/15の日記

21:41
*寒いときには
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 厳寒の冬、その真っ只中にあたるこの頃はとにかく寒い。
 植物は種の中に閉じこもり、獣は身を縮めて眠りの中で春を待つ。
 では人は、といえば。

「っぶい!! 寒い! さーむーいー!!」

 普段なら押し入れの奥に放り込んだままにしているどてらを着た上に布団を被り、それでもなお寒いと喚いているのは、意外なことに七松小平太であったりする。
「いや、それはもう分かりましたから、先輩」
 そして、そんな小平太の世話を焼いているのは、これまた意外なことに五年の竹谷八左衛門だった。
 一体どうしてこうなったのか。
 それはたまたま六年い組と六年は組が合同授業で出掛けており、図書委員が総出で本の修繕を行っているから―――即ち、仙蔵・文次郎・伊作・留三郎が出掛けている上に長次も相手になってくれないので、同室者が委員会とその付き合いで留守になっている=ヒマそうな竹谷のところに小平太が来たから―――である。
 竹谷としては双忍の留守=自分は暇という方程式に一過言残してやりたいところではあったが、現に自分がこれから成そうとしていたのはただの“茶飲み”であるという事実を思うと強くは出れず(それでなくとも相手は先輩なのだ)、結果として小平太の相手をするより他にはない。
「今、湯を沸かしてますので、もうちょっと待ってて下さいよー」
 こんもりと山を作っている布団の塊に呼び掛けつつ、急須に茶葉をいれ、いつもは使わない予備の湯呑みを用意し。
 竹谷は着々と準備を進めていった。
 そうこうしている内にお湯が沸き、急須に注いで後は茶葉が開くのを待つのみ、となったところで。

「〜〜〜なぁこら竹谷! 寒いんだってば!!」

 突然、小平太に体当たりをかまされて、竹谷の視界はひっくり返った。
「どぅわぁあ!?」
 ひっくり返る刹那に、湯を注ぐのに使っていたやかんを持っていなかったことに心底から安堵する。
 だが、それもつかの間。
「―――知っているか、竹谷」
 今度は頭上からは楽しそうな声が降ってくるので、竹谷はいよいよ訳が分からなくなってしまう。
「…いえ、知りません…けど…」
 一体なんなんですか、と。
 言いそうになるのをぐっと堪え、竹谷は辛抱強く問い返した。
「ふふふ、ならば教えてやろう!」
 竹谷に覆いかぶさったまま腕を張って少しだけ距離を開け、訳が分からないと訴える後輩の目に楽しそうに視線を絡めて。
「こうして二人でくっついているとな、暖かいんだ!」
 小平太は笑う。
 さっきまで寒い寒いと騒いでいたのとは、まるで別人のように晴れやかに。
「………、………。」
 だから。
 重いです、とか。
 取り敢えずどいて下さい、とか。
 言うべきことは沢山あったのだとは思うけれど。
 呆気に取られた竹谷の思考回路からはそれらの言葉が消えてしまい、口をついたのは結局そのどれでもなかった。
「………確かに、」
 頬が緩むのは多分、相手の笑顔につられたせいで。
「…暖かいっすねぇ」

 二人は顔を合わせてしばし微笑み。
 それから、やや冷めて飲み頃になった茶をゆっくりと味わったのだった。

END.

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はい、やおい!

後輩相手でも振り回す小平太が書きたかったんです
相手が竹谷なのは忍ミュ第3弾を見て漲ったからですよ←

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