10/14の日記

21:00
*綺麗な人
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 教科書である忍たまの友が何とも雑に放置されている横に借り物の鏡を乗せた文机の上に、上体をだらりと凭れかけさせて。

「うーん…」

 小平太は何度目になるか分からないため息をついた。
 まるで睨み付けるように見据えた先には、鏡の中からこちらをジロリとねめつける自分の顔がある。
「…分からんなぁ」
 どんぐりみたいな丸い目。
 潰れてこそいないが通っているという訳でもない鼻筋。
 色男の条件には程遠いと思っていたこの顔を、何故かは全く分からないが突然、綺麗だと褒められた。

 それは日中の、委員会でのこと。
 例によってぐだぐだと自分の美しさとやらについて自慢話を始めた滝夜叉丸の声を聞き流しながら、小平太は珍しくもこんな言葉を吐いた。

『まぁ、そりゃ確かに、私よりかは綺麗かもしれんがな』

 …と。
 別に他意はない言葉だった。
 思ったことをそのまま声に乗せた結果に過ぎないような、他愛のない言葉のつもりであったし、その場にいたみんなも得に気にしてはいなかった。

 ただ、一人を除いては。

“―――綺麗ですよ、先輩は”

 マラソンやバレーボールを終えて解散となったとき。
 そいつは意を決したような顔をして駆け寄って来て、開口一番にそう言ったのだ。

“―――綺麗ですよ、先輩だって。 誰が何と言おうと、僕にはそう見えます!”

 お前、視力は大丈夫か、と。
 小平太は瞬間的にそんなことを思わないでもなかったが、告げてくるそいつの顔があまりにも真剣だったので、とうとう言葉には出来なかった。

 思えば後輩を相手に、余計な気でも使わせてしまったのだろうか。
 でなければこの自分の顔を捕まえて“綺麗”だなんて。

「…まぁ、でも」

 ―――満更悪い気は、しないものだ。
 思って、小平太はふにゃりと笑う。
 机の上に置かれた鏡が、部屋に差し込む斜陽を写したてキラリと輝いた。

END.

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一つ前が小平太を可愛いという話だったので、今度は綺麗だといってみました。
何ですかこのオトメン小平太は(笑)

後輩は誰でもお食満なんですが、個人的な好みで言うなら金吾かなぁ…
体育委員×小平太が読みたいです。
しまった自分で書いたんじゃ萌えない←

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