NOVEL<U>

□Ооさくらうた 弐оО
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倒れゆく様を見ていた
ひとり、またひとり
消えゆく灯
この時から考えていた
何をしているんだろうと

血にまみれる汚れた手
ひとつ、またひとつ
誰かの紅
染まってゆくその躯に
脅えてる自分がいた

なぁ、これでいいのか
俺達のしたかったことは
戦争 人斬りってのは
こんなにも冷たいことだったのか───


。。さくらうた 弐 。。
幕開け.万事屋編.

「...んで?」
眼の前に座る長髪を見据えた坂田銀時は用件を促す。
万事屋にやって来た桂を見た瞬間、銀時はいつも通りに彼の嫌がるアダ名を呼んだ後、続く茶化し言葉を呑み込んだ。いつもと何か様子が違う、嫌な感じがした。取り敢えず中に入れると助手の志村新八が直ぐにお茶の用意をする為に台所へ向かうと、すぐに帰るから、と止める。やはり予感は当たったらしい。
「...桂ァ」
何があった?とは聞かない。そんなのは分かりきってる事。桂も銀時が真面目に聞く体勢であるのがわかった。しかし、言いづらい。
言葉数がいつも以上に少ない二人に新八も神楽も定春すらも静かに見守っている。

嫌な沈黙が辺りを包む。話すタイミングを計りかねていた桂を助けるように、何処かに吊るされた季節外れの風鈴の音が万事屋に響き渡り、それを合図に漸く桂が口火を切った。
「高杉が動く」
「......!」
「え...!?」
「高杉って、人斬り仁蔵とかまた子達と組んでたあのヤバイ眼帯男アルカ?」
「そうだ。今回のヤツの目的は江戸ターミナルの破壊。知ってると思うが、ここ二ヶ月に続いた連続爆破テロ事件、火薬庫での爆弾の大量盗難、全て奴等の仕業だ」
ちらり、と一瞬だけ銀時は自身の机を見た。散らかったその場所には数週間、いや数ヶ月分の新聞の山があり、その中に桂の言う“相次ぐ謎の連続テロ”“消えた大量爆弾”等と大きく書かれた内容が長期に渡って1面と2面を陣取っていた。一時期テレビの全チャンネルが一大ニュースとして取り上げていたので知らない者はいないかもしれないが、まさかその事件の首謀者が昔馴染みだったとは。盛大に舌打ちをしたいのを何とか堪えて目の前にいるもう一人の昔馴染みに話の続きを視線だけで促す。
「...報告によると、高杉はあの紅桜の事件後、更なる強大兵器と勢力を探していたらしく、春雨以上の過激組織と手を組んで裏で密かに動いていたそうだ」
「その準備が揃った、っつうわけか」

銀髪を掻きながら呟くように言った銀時に、無言を肯定とした桂は銀時だけを見ながら続けた。
「真選組も来るという噂もある。そうなれば二代勢力の激しいぶつかりは免れん。俺は、俺達は事が悪化する前に高杉を止める」
「......。」
ほんの一瞬、邪魔くさそうな銀髪から覗く死んだ魚の眼付きが変わったのを桂は見逃さなかったが、黙って視線を反らした。
「...話はそれだけだ」
ではな、とソファから立ち上がった桂はそれから一言も言わずに万事屋を後にした。
「...桂さん、話しに来ただけだったんですかね」
「てっきり銀ちゃんに助け求めて来たと思たヨ」
「...あいつァ、そーいう野郎だ」
しつこい程もう一度剣を取れと何度も迫って来るのに、こういう時は何も言ってこないのだ。紅桜の時のように命がかかる時、は。
それをわざわざ伝えに来たのは相手が相手だから。
「春雨よりも過激な組織って、桂さん達大丈夫なんですかね?」
「それに真選組も絡んできたらヅラ、ピンチアル!」
「......。」
「銀さん、どうするんですか?」
「銀ちゃん?」


「......酔えねェ」
悔しそうに呟きながら今ので空になった焼酒の入っていた湯呑みを台に置く。御代わりの意を伝えようと口を開いたが、言葉を発する前に馴染みの居酒屋の店主からもう終いにしなと止められた。いつの間にか銀時の周りは融に両の手で数え切れないほどの空いた酒瓶があって、流石に驚く。
その様に店主の親爺は決して酒豪ではないはずの常連を呆れとも心配ともとれる表情で見る。
顔色は勿論、意識もこの店の暖簾をくぐった時と変わらずしっかりしている。
「親爺、ジュースと...」
間違えてんじゃねェだろうな、そう続けようした言葉は止めた。そんな訳がないのも、酔えない理由も本当はよくわかっているのだ。
「...お勘定頼むわ」
これ以上飲んだところで意味がない。そう悟った銀時は精算を済ませて暖簾をくぐり、橙色から闇色に染まった空を仰ぎ見てから歩き出した。

弐終 参始



***妙さんがいなぁーい;;思いの外に長くなってしまった銀時..いやいや万事屋編。次こそ妙の姐さんと銀の旦那の絡m..(自粛)こっからキャラを続々出す予定だけど..まとめられんのだろーか;;***


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