夏の終わりの日は、
いつもより少しだけ、肌寒く感じた。
ただ、
隣の彼とつないだ手だけは、
温かかった……
「アイク、」
「ん?何だ、マルス」
「……ちょっと、来て」
夏の終わり、
それは、“乱闘の終わり”でもあった。
僕はアイクの手を引いて、近くの湖へ行く。
みんなの声が、遠くで聞こえた。
「おい、マルス……」
「アイク、」
僕はアイクに背を向けたまま、言った。
「僕たち、別れよう」
「は……?」
きっと今振り返ったら、アイクは信じられない、って顔してるんだろうな。
当り前か。
言い出した僕でも、アイクと離れたくないんだから。
「マルス、何言ってるんだ……?」
「今日で“乱闘”は終わるんだよ?
つまり、僕たちは元の世界に帰らなきゃいけないんだ。」
「……」
「本来、僕たちは出会っちゃいけなかったんだよ。」
僕とアイクは、違う世界に住んでる。
マスターとクレイジーが“乱闘”をするために別世界に住むさまざまなものたちを呼んだ。
だから僕たちは出会ったんだ。
なのにこんな……
「俺は、マルスに出会えてよかったと思ってる。」
僕だってそう。
だけど、僕には……
「僕は、」
だから、嘘を吐く。
「君が嫌いだよ」
嘘を吐くことが、こんなに苦しいなんて。
冷たい風が、通り抜けて行く。
アイクは、僕の手を離した。
「そうか、」
何だか、悲しそうに感じたのは気のせいじゃないと思う。
「悪かった」
「っ……!」
「じゃあ、な。」
アイクが、走って行ったのが分かった。
振り向いて、アイクを引き留めたかった。
だけど、これは僕が選んだ終わり方。
だから……
「……好き、だよ……アイク」
花火が、打ち上がる。
子供組の歓声につられて、僕も空を見た。
暗い夜空に、色とりどりの花。
それが、何故か滲んで見えるのを気のせいだと片付けて、
僕は、皆の所へと戻って行った。
Fire Flower
君を好きな事を辞めた、
ある夏の終わりの日……
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