15000hit企画
□3.視線は交差しても
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「……クレイジー、クレイジー!」
「……ん……え?」
ぼんやりとした視界の中、映ったのはマスターの顔の度アップ。
わぁ、マスターって睫毛長……下手したらあたしより長いんじゃないの……じゃ、なくって!
「え……ええぇぇぇえっ!?」
思わず叫んで、後ずさる。
勢いに乗ってソファーから転げ落ちて、頭を思いっきりぶつけた。
「……っ……」
「大丈夫か?クレイジー。」
「えぇ、大丈夫……ってそうじゃなくて!
マスター!何考えてるのよッ///」
「……?」
この、鈍感めっ。
はぁ、と小さく溜め息をついた。
もう多分、顔真っ赤よね……あたし。
マスターは整った顔しててカッコいいんだから、もうちょっと警戒心って物を持ってほしいわ……
「マ、マスター。あたしに何か用があったんじゃ無かったの?」
「いや、お前が眠っている間に仕事が終わったから、起こしただけだ。」
……そういえば、仕事してるマスターを見てたけど眠くなって寝ちゃったんだっけ……。
「そう……何も手伝えなくてごめんなさいね?」
「元から手伝う気など無かったのだろう?」
「ま、まぁ細かい事気にしちゃ駄目よ!」
「はぁ……。」
柔らかい、雰囲気。
少し前までは想像も出来なかった、マスターの笑顔。
みんな、みんな彼らのおかげ。
嬉しいことなのに、ちょっとだけ嫉妬しちゃう自分がいる。
(醜いな、あたし。)
何だか虚しくて、空笑いした。
「……マスター、」
「どうした、クレイジー?」
そんな風に、綺麗な笑顔を浮かべるあたしの兄。
あたしの対となる存在。
「あたしにとってマスターはね、」
あたしはこんなにも、マスターに依存している。
大好き、
「何者にも代えられない、大事な兄なの。」
「……我にとってもお前は、大切な妹だ。」
「……まぁ、今はそれでいいわ。」
「?」
だってあたしにとってマスターは、大切な兄であると同時に。
……ずっと前からの、想い人だもの。
「ねぇ、マスター」
「何だ?」
あたしがマスターを呼べば、マスターはあたしを見てくれる。
視線が、交わって。
あたしはマスターの、その青い眼を見るだけで胸が高鳴って、鼓動は早くなる。
けどマスターは、平気であたしを見て。
好きな人、として見ているあたしと、妹、として見ているマスター。
これがあたし達の、温度差……。
でもあたし、諦めないからね?
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